土地・不動産 2018.11.16
相続したマンションの管理費は誰が払う?相続人がいなくなったらどうなる?
マイホームとして、マンションを選ぶ人はたくさんいます。また、戸建てよりも管理が手軽なことや、子ども世帯と近居するため、または車の運転をやめた後でも生活がしやすいようにという理由から、都市部のマンションへ移住する高齢者層も増えています。
それに伴い、入居者の死亡によって管理費の支払いが止まる、あるいは滞納分の管理費の請求に困っているという問題が増えているのも事実です。この記事では、相続したマンションの管理費の支払い義務と、相続人が1人もいない場合のマンション管理費の行方について解説します。
マンションを相続する相続人に支払い義務がある
相続とは、被相続人が生前に所有していた財産や義務、債務をすべて受け継ぐことです。遺言書が見つかれば、その内容に従って財産を相続すると同時に、相続財産に応じた債務も相続します。
遺言書がないケースでは、相続人同士で協議を行い、財産と債務をどのように分け合うかを決めることとなります。
自分の希望通りの財産を相続できるケースばかりではありませんし、財産は欲しいけれど債務だけは相続したくないという主張も通りません。
なお、マンションを相続することになった相続人には、マンションの所有権に伴う義務や債務を負うことが求められます。
マンションの管理費を支払うことも、マンションを所有することに伴う当然の義務です。また、被相続人がマンションの管理費を滞納していたとしたら、マンションの相続人がその債務を弁済しなければなりません。
相続したマンションの管理費が滞納されている場合の対処
相続の初期には、被相続人が遺した財産の調査を行います。その際に、被相続人がマンションの管理費を滞納していたことが判明するかもしれません。
管理費の滞納が数か月分程度であれば、極端に重い負担とはならないでしょう。しかし近年では、何年もの間、管理費を滞納していたことが分かり、相続人が当惑するケースも増えています。年単位の滞納になると、相続人が弁済しなければならない管理費は数十万、時には100万円を超える場合もあります。
マンションの他にも、何か価値のある財産を相続できるならまだ良いですが、相続できるのはマンションだけという場合、相続人は重い金銭的負担を強いられることになってしまいます。
こんな時、どう対処したら良いのでしょうか。考えられる対処法は以下の2つです。
限定承認する
被相続人のマンション管理費滞納は分かっているものの、どうやら価値のある財産もそれなりに残っていそうだという場合には、限定承認をすることができます。財産の範囲内に限定して債務を弁済する一方、財産以上に債務がある場合には、その弁済義務を負わないものとする手続きです。
限定承認は、これから財産が見つかる可能性がある場合にのみ、選択しましょう。どう調べても明らかに債務の方が大きい場合には、次に紹介する手続きを取るのがベストです
相続放棄する
被相続人の遺したものを一切承継しないための制度が、相続放棄です。価値のある財産よりも明らかに債務が多く、相続することが相続人にとって不利益にしかならないことが明白な場合には、相続放棄が賢明でしょう。
相続放棄は、家庭裁判所に申立をして成立する法的手続きです。相続放棄によって、その人は最初から相続人ではなかったことになるため、被相続人のいかなる債務も弁済する義務は負いません。それと同時に、どんなにわずかであっても被相続人の財産を相続することもできません。
相続放棄の成立後に相続放棄を撤回することは、まず不可能です。そのため、十分な財産調査を経て、慎重に決定するべきことでもあります。
相続人がいなくなったマンションの管理費はどうなる?
マンションの管理費には、5年という時効があります。ただ、5年経てば滞納した管理費がすべて時効になるのではありません。管理費の債権は1か月単位ですから、古いものから1か月分ずつ順番に時効を迎えます。
つまり、管理費滞納から5年経過した時点で初回の管理費滞納額が1か月分消え、翌月にはさらに1か月分が消える、ということです。マンションがある限り、管理費は積みあがっていきます。
では、全員が相続放棄して相続人が誰もいなくなったマンションの管理費は、どうなるのでしょうか。この場合、最後の手段として、相続財産管理人の選任申立をすることになるでしょう。
申立は、被相続人の利害関係人が行えます。管理費を滞納されているマンションの管理組合も利害関係人となりますから、申立が可能です。
相続財産管理人は、他に相続人になり得る人がいないかを調査したり、被相続人の財産を売却することで、債務を弁済したりする管理業務を行います。
マンションを競売にかけて売却できれば、そのお金でマンションの管理費は弁済されるでしょう。マンションは売却できたものの、管理費の残債が残るようであれば、新しい所有者が管理費の滞納を引き継ぐことになります。
まとめ
高齢化が加速する日本にあって、マンションの相続や管理費の滞納を巡る問題は、今後も増えていくことでしょう。
これから相続させる立場にある人は、管理費の滞納によって相続人に負担を強いることのないよう、十分注意して生活設計をしていくべきです。
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