相続税 2019.06.11

知っておくべき相続税の基礎控除

相続を控える人の多くが気にかけるのは、相続税はどれほどかかるのか、という点でしょう。たくさんの財産を相続できる人はその分、多額の相続税を支払う義務を負います。
財産はお金ばかりとは限らないものの、基本的に税金はお金で納めなければなりません。相続財産が多いとしても、手放しで喜べない場合もあるでしょう。
相続税には「基礎控除」という制度があり、相続する財産額によっては相続税がかからない場合があります。この記事から相続税の基礎控除について、理解を深めていきましょう。

記事ライター:棚田行政書士

相続税の基礎控除とは何か

相続税の基礎控除とは、遺産総額から差し引くことができ、相続税の課税対象から外れる金額のことを言います。

被相続人の遺した財産は、遺族が生活していくために必要な財産です。財産額の大小を考慮せずに相続税がかかるとなれば、財産の少ない世帯は相続を機に困窮してしまうかもしれません。

そのような事態を避けるために、一定の金額以下の財産には相続税をかけないための取り決め、基礎控除が設けられているのです。

 

相続税の基礎控除額の計算

相続税の基礎控除額の計算の仕方は、以下の通りです。

「3,000万円+法定相続人の数×600万円」

3,000万円の基礎控除は、どんなケースでも固定となります。変動するのは、600万円の部分です。

以下の表のように、法定相続人1人につき600万円が基礎控除に加算されるため、法定相続人の人数が増えるほど基礎控除額は大きくなります。

法定相続人の人数 計算式 基礎控除額
1人 3,000万円+(600万円×1) 3,600万円
2人 3,000万円+(600万円×2) 4,200万円
3人 3,000万円+(600万円×3) 4,800万円
4人 3,000万円+(600万円×4) 5,400万円
5人 3,000万円+(600万円×5) 6,000万円

相続税は、上記の基礎控除額を引いても、なお遺産が残っている場合のみかかる税金です。遺産総額が相続税の基礎控除額の範囲内に収まっていれば、相続税は非課税となります。また、相続税の申告も不要です。

 

相続税の有無を確認するための計算の仕方

先に考えたように、相続税の基礎控除は相続人が1人でもいれば3,600万円となり、かなりの金額になります。

そのため、「財産すべてをかき集めてもそんな大金にはならないから相続税は非課税だ」と思い込んでしまい、いざ相続が始まってから基礎控除額を超えていることに気が付いて慌てるケースも少なくないのです。

自分、または自分の親の遺産が本当に相続税の基礎控除内かどうかは、財産すべてをよく調べ、遺産総額を試算してみなければ分かりません。

相続開始後に慌てないためにも、以下の3つのステップを踏んで財産状況を調べ、相続税の基礎控除額に収まるかどうかを事前に確認しておきましょう。

1.正味の遺産総額を調べる

まず、相続によって遺産となる可能性のある財産の総額を調べます。

現金や預貯金、有価証券、不動産などは遺産の大部分を占めることになるでしょう。自動車や家財道具、美術品や骨とう品、貴金属類なども含めて考えます。

生命保険の給付金なども、被相続人の死亡によって生じる財産のため、遺産に含めておきましょう。

現金や預貯金の価値は一目瞭然ですが、不動産や美術品などは金銭的価値の算出が容易ではありません。このような遺産の計算方法については、法律によって定められた基準があります。それに従って計算してみましょう。

ただし、専門知識のない人にとっては非常に難しい計算のため、税理士に相談するのが最善です。

並行して、マイナスの遺産も綿密に調査します。借金などの債務はもちろん、保証債務や各種税金の未払い、クレジットカードやローンなどの利用額も確認しましょう。

これらは当然、遺産総額から引くことができますが、相続人が被相続人の借金を肩代わりするようなことにならないためにも、慎重に調べる必要があります。

2.法定相続人の人数を確認

先に表で確認した通り、法定相続人の人数は相続税の基礎控除額に大きく関係します。法定相続人が何人になるのかも調べておきましょう。

誰が法定相続人となるのかについては、法律による規定がありますので確認して下さい。例えば、被相続人の配偶者は必ず法定相続人となり、その子どもは最優先で法定相続人となります。

養子でも法定相続人になることはできますが、被相続人に実子がいる場合、養子は1人までしか法定相続人に数えることはできません。被相続人の親は、被相続人の子どもがいない場合に限り、法定相続人になります。

このように、家族構成によって法定相続人となる人は変わってきますので、確認が必要です。

3.相続税の基礎控除額の計算

法定相続人の人数が判明したら、相続税の基礎控除額がいくらになるのかが分かります。1で考えた正味の遺産総額から、相続税の基礎控除額を引いてみましょう。

遺産総額が相続税の基礎控除額よりも少なければ、相続税は非課税です。遺産総額が相続税の基礎控除額よりも多く、余剰額があるなら、その部分については相続税がかかります。

 

まとめ

被相続人となる人や、遺族となる人が生前に相続税の基礎控除について調べておけば、法定相続人の税金を上手に節税したり、場合によっては非課税にしたりすることさえ可能になる場合があります。事前の確認をしっかりと行うようにしましょう。

関連記事

相続税

高額な不動産しか遺産がない。相続税が払えない時にはどうしたらいいのか?

相続の流れ 相続財産・法定相続人の確定 被相続人が亡くなった後は、相続の手続きを行うことになりますが、まず最優先で行うことは、相続財産の確定と法定相続人の確定です。 相続財産については、「財産目録」を ...

2021/08/25

相続税

可愛がっていたペットに遺産を相続させるができるのか?

「ペットに相続」は有効か? 遺言者の意図は? Aさんには妻や子どもがなく、飼っている3匹の犬が唯一の家族です。高齢になったAさんは、終活をしていく段階で、存命中の2人の兄が自分の財産を相続することに気 ...

2021/08/11

相続税

父の死後愛人の子が現れた!遺産相続はどうなる?

隠し子にも相続権はある?分かれ目は認知の有無 亡くなった人の隠し子の存在が、死亡後にわかることがあります。よくあるのが、相続手続きのために戸籍謄本を集めたときに、認知している子供がいたというケースです ...

2021/07/21

相続税

相続税改正で何が変わった?

相続税改正で、基礎控除が大幅にダウン 今回の相続税改正によって、幾つかの運用が変更になりましたが、中でも最も影響が大きいのが「基礎控除の大幅ダウン」です。相続税は、すべての方に課税されるわけではなく、 ...

2017/10/02

相続税

相続税はいくらから課税されるのか

相続税がいくらからかかるかは、課税対象財産による 相続税の課税対象となるのは、課税対象財産です。そして、課税対象財産とは、相続財産から基礎控除額を引いた金額です。 基礎控除額の計算式は、以下の通りです ...

2017/10/02

相続税

みなし相続財産って何?

みなし相続財産は、相続税の課税対象 みなし相続財産は、厳密には相続や遺贈で取得しているものではありません。 ですが、相続税の課税にあたっては、相続財産とみなして相続税を課税することになっています。 な ...

2017/10/02

Copyright© 相続メディア nexy , 2025 AllRights Reserved.