相続税 2019.10.28
子供や孫にかかる相続税が心配!とるべき対策とは?
2015年から相続税の基礎控除額が引き下げられたことから、将来子供や孫に多額の相続税が課税されるのではないか、と不安に感じている方が増えているように思われます。
では実際、自分自身に相続が発生した場合、子供や孫にはどのくらいの相続税が発生するのでしょうか。今回は、子供や孫にかかる相続税や、生前にとっておくべき相続税対策などについて解説します。
子供にかかる相続税は人数によって変わる?
相続税を試算する際に重要になるのが「基礎控除」です。基礎控除とは、すべての相続において利用できる控除制度のことで、次の計算式で求められる金額までについては、相続税が課税されません。
3,000万円+法定相続人の人数×600万円
このように、相続税については、法定相続人の人数が1人増えるごとに600万円分控除額が上乗せされるため、子供の人数が多ければ多いほど、相続税の基礎控除額が多くなり、納税負担が軽くなるのです。
また、養子についても実の子供と同じように法定相続人の人数に加えられますが、養子が2人以上いる場合については、相続人にはなるものの、相続税の基礎控除の計算人数には1人までしか参入できないことになっています。
孫がいる場合はどうなるの?
孫については、子供が生きている間については法定相続人にはなれません。子供がすでに亡くなっている場合については、子供の相続人としての地位を孫が代襲して相続する「代襲相続」が発生します。
代襲相続になれば、孫が相続人になりますが、子供が生きていても遺言書に孫に財産を取得させる旨を記載すれば、子供と孫の両方に遺産を振り分けることも可能です。
ただし、代襲相続ではないのに孫が遺産を取得する場合、意図的に一代飛ばして財産を取得することになるので、相続税が通常の2割り増しとなるため、注意が必要です。
これを「相続税額の2割加算」といいます。
遺言書の必要性と現実について
相続についてネットなどで検索して調べると、相続税対策として遺言書を書くべきというアドバイスをよく見かけます。
遺言書とは、被相続人が次の世代に残せる法的な書面の事で、遺言書に遺産分割の内容について記載すれば、原則として、その内容の通りの遺産分割をすることになります。
先ほど解説したように、子供が生きている状態で孫にも財産を取得させたい場合については、遺言書にその旨を明確に記載する必要があるのです。
その他にも、孫に限らず法定相続人ではない人でも、遺言書に明確に記載しておけば、知り合いなどの親族ではない人に対しても、遺産を取得させることができます。
遺言書がトラブルを誘発しているという現実
一般的には、遺言書がないと相続人同士で揉めてしまい、遺産分割がうまくまとまらないので、「遺言書を書いてその通りに執行したほうがよい」という意見が多いのですが、実際の相続の現場では、真逆のことがよく起こります。
遺言書の内容は、基本的に被相続人が自分の気持ちを反映して書きますので、いくらトラブルが起きないよう配慮したとしても、相続人の中には必ずといっていいほど納得できない人が出てくるのです。
例えば、夫が死亡して相続が発生した際に、子供がおらず、配偶者と姉が相続人になることがよくあります。
夫としては妻に多くの遺産を相続させたいと思って遺言書を書くかもしれませんが、姉からすると妻に遺産のほとんどを持って行かれることを快く思えません。
特に、相続財産の中に実家の家や土地が含まれていると、なおさらその気持ちが強くなり、反発が起きるのです。
確かに、有効な遺言書が残されていれば、たとえ他の相続人が反対したとしても、一方的にその内容通りに分割するよう手続きを進めていくことができます。
ただ、親族関係はその後も続いていくので、法律で一刀両断すればよいという類の問題でもないのです。
遺言書を書くなら専門家に相談すべき
遺言書が原因でトラブルになるケースの大半は、弁護士や税理士に相談せずに独学で書いていることが多いようです。
自筆証書遺言であれば、誰でも書こうと思えば簡単に書くことができるため、ネットの情報などを参考にして自己流で書くことも可能ですが、プロのアドバイスを受けずに作成すると、遺留分を侵害していたり、法定相続分を一切考慮していなかったりするといったトラブルの火種を作ってしまうことになります。
弁護士や税理士に相談すれば、自分自身が希望する遺産分割の内容が法的に実現できるのか、また、他の相続人からどのような反発が予想されるのか、子供の相続税負担はどれくらいになるのかなどについてアドバイスしてもらうことが可能です。
まとめ
子供の相続税について心配な方は、税理士に相談して遺言書を書いてみると、より理想とする相続の形に近づけるはずです。
遺言書については、非常に有効な相続対策ですが、遺言書のでき次第では、かえって紛争を発生させてしまう可能性もありますので、税理士に相談の上適切な遺言書を作成するようにしましょう。
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