相続税 2020.04.17
葬儀費用や交通費は控除できる?相続税の計算から控除できるものとは
相続が発生すると直後は相続税申告どころではありません。
葬儀会社に連絡して葬儀の手配やら、お墓の準備やら、親戚への連絡やらどんどん時間は過ぎていきます。
そんな中、相続人の方から「葬儀費用」や「交通費」は相続税の計算の際に、相続財産から控除していいのですか?という質問をよくいただきます。
確かに相続が発生したことで、葬儀費用をはじめ様々な費用がかかるため、どこまでが相続税を計算する際に相続財産から控除できるのか気になるところです。
そこで今回は相続税の計算から控除できる費用について詳しく解説します。
葬儀費用で相続税は安くなる?
結論からいうと葬儀費用は相続税の計算から控除できるものと、できないものに区別されます。
原則として葬儀費用は、亡くなられたことによって発生する必然的な費用なので、基本的には相続税からマイナス財産として控除することが可能です。
ただし、明確な基準を設定しないと相続税の節税のために常識を逸脱したような豪華な葬儀をする人が出てくる可能性があることから、葬儀費用に認められるものと認められないものがある程度区別されています。
葬儀費用に該当するもの
葬儀費用と一言でいっても様々な内訳がありますので、1つずつ確認していく必要があります。
・通夜、告別式の費用
通夜と告別式の費用は、葬儀費用として相続税の計算から控除することが可能です。
通常、これらの費用は葬儀会社に支払うことが多いので、葬儀会社から領収書をもらっておきましょう。
ただし、社会通念に照らしてあまりにも豪華な葬儀を行うと、全額が控除されない場合も出てきます。
・葬式の飲食代
葬儀に参列した人に出す飲食代も、葬儀費用として相続税の計算から控除することが可能です。
・心付け
葬儀を手伝ってくれた人に対して支払う、いわばバイト代のようなものです。
葬儀という関係上、手伝ってくれた人から領収書を回収することは難しいでしょう。
その場合は支払った相手や人数、金額などをメモしておくことで相続税の計算から控除することが可能です。
ただし、あまりに高額な心づけは認められないため、概ね1万円以下と考えましょう。
・お寺、神社、教会に支払った費用
葬儀は故人の信仰していた宗教によって様々ですが、概ね上記のいずれかに対してお布施など何らかの費用を支出することになるでしょう。
これらの費用も領収書がなければメモしておきましょう。
ただし、親族を葬儀に招くために支出した交通費については葬儀費用として認められません。
・火葬、埋葬、納骨費用
火葬場などに支払う費用も葬儀費用として認められます。
ただし、社葬を行った場合は会社側の経費の問題になるため、相続税の計算上控除することができません。
判断が難しい葬儀関連費用
次の費用については、葬儀に関係して支出していても葬儀費用として相続税の計算から控除できるかどうか、判断が難しいため注意が必要です。
・タクシー代などの交通費
葬儀で親戚一同を集める際には、交通費を喪主が負担するというケースは珍しくないでしょう。近所に住んでいれば大した交通費にはなりませんが、北海道や沖縄、さらには海外に住んでいる場合は交通費だけでもかなりの金額になることもあります。
喪主としては交通費が控除できないと非常に厳しいところですが、残念ながら交通費は控除できません。
たとえ喪主が交通費を負担して領収書もあったとしても、葬儀に直接関係する費用ではないという認識から相続税の計算上は控除できないのです。
ちなみに、親族が近所のホテルに宿泊した場合の費用も交通費と同様に控除できません。
また喪主自身が葬儀の手配などで交通費がかかることもあります。
例えば、ガソリン代や高速道路代、駐車場代などがかかることもありますが、基本的にこれらの交通費も葬儀費用として控除できません。
・生花
葬儀といえば交通費もさることながら、生花の費用もばかになりません。
生花については、喪主が負担した範囲において葬儀費用として認められます。
・死亡診断書
人が亡くなると死亡診断書を医師が作成しますが、この際に発行手数料や作成料がかかります。相続税申告に死亡診断書は必要ありませんが、発行を受けた際に支払った費用については相続税の計算から控除することが可能です。
・位牌代
基本的に葬儀費用として認められません。
ただし、葬儀で使うものであれば例外的に認められることもあるようですが、仏壇に飾るものであれば葬儀費用として認められません。
まとめ
葬儀費用として相続財産から控除できる項目は、判断に迷うものもありますが基本的に葬儀のために直接的に支出しているかどうかがポイントとなります。
よく領収書の有無で判断している人がいますが、たとえ領収書が出ないものでも葬儀に直接関係する費用であれば控除することが可能です。
反対に領収書が出やすい交通費については、いくらかき集めたとしても相続税の節税にはつながらないので覚えておきましょう。
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