相続税 2020.07.20
相続税を無申告で乗り切ることができるのか
相続税申告は一生のうちに何度もあることではないので、実際に相続が発生した際にスムーズに進まないことがよくあります。
中には、どうせばれないだろうと高をくくって無申告のまま切り抜けようと考える人もいるようです。
そこで本記事では、相続税の無申告がばれた場合のリスクについて詳しく解説します。
相続税の無申告はばれるのか
相続が発生したら相続財産を相続人が調査し、相続税を自分で計算して納税しなければなりません。通常は税理士に依頼することが多いですが、経費がかかるのを嫌ってそのまま放置してしまう人もいるようです。
相続税は役所が勝手に計算をして納付書を送ってくれるものではないので、相続人自身が何も動かなければそのまま無申告の状態になってしまいます。
相続税申告は必ず必要か
そもそも相続税申告は必ずすべての人がしなければならないわけではありません。
基本的に相続財産が以下の基礎控除額以下であれば、無申告にしていても何ら問題はありません。
相続税の基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の人数
例えば、相続人が配偶者と子2人の場合は相続財産が4,800万円以下であれば、相続税は無申告のままで大丈夫です。相続税はあくまで基礎控除を超える場合に申告が必要なので、それ以外であれば無申告でよいのです。
ただし、以下の場合は相続税がかからなくても相続税申告が必要になります。
各種控除制度を利用する場合
相続財産が基礎控除額以下であれば無申告でも問題ありませんが、特例制度を利用するとなると無申告ではまずいです。
例えば、配偶者が相続した財産については、配偶者の税額軽減によって最低でも1億6,000万円までは非課税になるので、よほど大きな金額を相続しなければ相続税は発生しません。
そのため、「相続税がかからない=無申告で大丈夫」と判断してしまう方が時々いるのですが、これは大きな間違いです。
たとえ相続税がかからない場合でも、特例制度を使わなければ非課税にならない方については、無申告の状態だと特例が適用されないので相続税が課税されてしまいます。
特例を適用させるためには、例え特例を適用することによって相続税が非課税になる場合でも無申告のままにせず申告する必要があるのです。
相続税が無申告だと税務調査は入るのか
相続税申告を無申告のまま放置していたとしても、税務署は気が付かないのでは?と甘く考える人が時々いますが、実際は必ず気づかれます。人が死亡すると役所に死亡届を出しますが、その情報が所轄の税務署にも共有されるのです。
税務署は生前に誰がどの程度の収入を得ていたのかについて把握しているため、死亡した場合に相続税がかかる人なのか、かからない人なのかというのはおよそ予想してマークしています。
そのため、税務署側が「この人は収入が多かったから、相続人が相続税申告してくるだろう」と予想しているのに申告期限を過ぎても無申告のままだと、怪しいと考えて税務調査の対象になるのです。
無申告でもしばらくは音沙汰ナシ
相続税を無申告で乗り切れると誤解する人が多い原因、それは相続税申告期限を過ぎて無申告だったとしてもすぐには税務調査が入らないからです。
相続税の税務調査は相続税申告期限が切れてから2~3年ほど経過してからお尋ねが入ることが多いので、相続人の多くはもう切り抜けたと勘違いしてしまうのですが、実際はそのあとに税務調査が入ります。
相続が発生してから3年も経ってから税務調査が入ると、ほとんどの方が詳細を覚えていません。そのため調査員にいわれるがまま、重加算税などのペナルティが課税されてしまうリスクがありますので十分注意が必要です。
相続税に時効はあるのか
相続税申告義務があるにもかかわらず無申告なのは絶対にダメですが、自分自身では非課税だと思っていても本当に大丈夫だろうかと不安な方もいることと思います。
相続税は相続が発生してから5年を経過すれば、時効によって以後相続税は請求されなくなります。ただし、相続税申告義務があると知っているのにもかかわらず、無申告のまま放置しているケースについては5年では時効にならず7年となりますので注意が必要です。
まとめ
相続税は無申告のまま放置していると、数年後に加算税とともに高額な相続税を請求される可能性がありますので、課税対象となっている相続人の方は必ず期限までに相続税申告をしましょう。
また、相続税申告の必要性がないと思って無申告にしている場合でも、5年を経過するまでは税務調査が入る可能性がありますので、関係する資料については処分せずに大切に保管しておくことをおすすめします。
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