相続税 2020.08.19
相続税の課税対象になる財産の金額とは
将来の相続が不安になって相続対策を考え始める人が増えていますが、そもそも自分に相続税がかかるのかどうかよくわからないまま、焦って相談に来られる人がよくおられます。
そもそも相続税はすべての人に課税される税金ではなく、課税対象となる金額次第で相続税は非課税です。
そこで本記事では、相続税の課税対象になる金額や財産の種類について詳しく解説します。
相続税が課税対象となる金額
相続税の課税対象者は基礎控除額以上の遺産を取得した人に限られ、以下の計算式で算出した金額で、相続人の人数によって変わってきます。
相続税の基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人
例えば、相続人が2名の場合の基礎控除額は4,200万円なので、遺産の総額がこの金額以下であれば相続税の課税対象者からは外れることになります。
マイナスの財産を考慮する
基礎控除額は預金財産だけですとなかなか超えませんが、不動産を保有している場合は金額が一気に上がるので基礎控除をオーバーして課税対象になる可能性があります。
ただ、このような場合でもまだ相続税の課税対象者から外れる可能性があることをご存じでしょうか。
それはマイナスの財産です。
相続というと財産をもらうことをイメージするかもしれませんが、被相続人にローンなどのマイナスの財産がある場合については、プラスの財産からその分を控除することができるのです。
例えば、1億円の土地と6,000万円の借金があったとすると、相続税の課税対象となるのは1億円から基礎控除を差し引いた金額ではなく、4,000万円から基礎控除を差し引いた金額になります。
先ほどのケースであれば基礎控除額が4,200万円なので相続税の課税対象ではなくなるのです。このようにマイナスの財産がある場合は、相続財産から控除できますので相続が発生した際にはプラスの財産だけでなく、マイナスの財産も漏れなく探すことがとても重要になります。
相続税の課税対象となる財産
相続によって取得した財産は、原則として金銭に見積もることができるものについてはすべて課税対象となります。
例えば、亡くなられた方が保有していた宝石類や絵画、掛け軸、骨董品、美術品などについても金銭的な価値があれば、評価額を算出して相続税の課税対象財産に加えて計算しなければなりません。
中でも次の財産については相続税が課税されないと思っている人がいるので注意が必要です。
お墓は課税対象なのか
亡くなられた方のお墓については、原則として相続税の課税対象からは外れますが、この点について誤解している人が多いので注意が必要です。
というのも、お墓は生前に被相続人が購入していれば課税対象からは外れますが、相続発生後に被相続人の預金を使って購入しても相続税は非課税になりません。
ですので、お墓については終活の一環として事前に購入しておいた方が、相続税対策の観点からも非常に有効といえます。
生命保険の保険金
被相続人が生命保険に加入していた場合は、受け取った保険金に対して相続税が課税されます。ただ保険金は受取人固有の財産なので、遺産分割の対象からは外れることから、相続税の課税対象ではないと誤解している人がいるため注意が必要です。
生命保険には500万円×法定相続人の人数の非課税枠が設定されているので、仮に相続人が2人いれば1,000万円まで保険金の受け取りに対して課税対象からは除外されます。
保険金は納税資金対策としても重宝しますので、加入する際には非課税枠を計算したうえで金額を設定するとよいでしょう。
相続税の課税対象じゃなくても申告が必要なケース
相続税申告というと相続税を納税する人だけが申告するものと思っているかもしれませんが、実はそうではありません。相続税の課税対象から外れる人でも、相続税申告が必要になるケースがあります。
それは、控除制度などを適用する場合です。
例えば、配偶者は相続した遺産が1億6,000万円か、法定相続分のいずれか高い金額まで相続税が非課税となる配偶者の税額軽減という特例制度が使えます。
通常、配偶者の税額軽減を使えば配偶者は課税対象から外れることが多いのですが、だからといって相続税申告が不要になるわけではありません。
特例制度を適用することで相続税の課税対象から外れる場合については、たとえ相続税がゼロになる場合でも必ず相続税申告をする必要があります。
まとめ
相続税はすべての人に課税される税金ではなく、一定以上の遺産を相続する場合に課税される税金なので、まずは自分自身のご家庭で相続が発生した時に相続税の課税対象になるのかどうかについて、専門家に相談してシミュレーションしておくことをおすすめします。
また、課税対象となる遺産の区別を間違えると正確な相続税が計算できないので注意しましょう。
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