相続放棄 2020.05.25
相続放棄をすれば固定資産税を回避できるのか
相続というとプラスのイメージがありますが、中にはもらっても困るマイナスの財産というものが含まれていることがあります。相続は「いいとこ取り」ができず、プラスもマイナスもすべて相続しなければならないので、入念に調査することがとても大切です。
そんな中、利用価値の低い土地を相続して固定資産税の負担に苦しむケースがあるようです。
そこで本記事では、固定資産税の負担を回避するための相続放棄のポイントについて解説します。
固定資産税とは?
固定資産税とは土地などの固定資産に課税される税金で、毎年1月1日時点の所有者に対して課税される税金です。自治体にもよりますが、6月頃に納税通知書が届き一括か4分割にて納税をすることになります。
マイホーム等使っている土地であればよいのですが、相続などで使う予定がない土地を相続すると、毎年固定資産税というコストだけがかかり続けることになり、これが非常に大きな負担となるのです。
相続放棄をする場合
相続による固定資産税の負担を回避するためには、相続放棄するのが1つの対策となります。相続放棄とは当初から相続人ではなかったことにする手続きで、家庭裁判所で行う正式な手続きです。
相続放棄をすれば借金や税金などの支払い義務から免れることができますが、それと同時にプラスの財産についても一切相続できなくなる点に注意しなければなりません。
例えば、預金1億円と使わない土地が相続財産という場合に相続放棄をしてしまうと預金1億円も手放すことになるのです。
よって、相続放棄するかどうかは固定資産税の負担の有無だけではなく、他の遺産もすべて調べ上げたうえで慎重に判断する必要があります。
固定資産税の滞納をチェック
毎年の固定資産税の負担だけであれば、そこまで高額ではないという場合もありますが、中には累積でかなりの額を滞納しているというケースも少なくありません。
土地を相続すると、将来発生する固定資産税だけでなく、過去の滞納分についても相続人に請求がいくことになるため、詳しく調べておかないと自治体から納税通知書が届いてびっくりすることになります。
滞納額は相続人から自治体に問い合わせをすればすぐにわかりますので、必ず確認しましょう。
相続放棄しても納税通知書が来る理由
相続放棄をすれば一切の権利義務を放棄することになるので、固定資産税を払う必要はありません。ところが、相続放棄をしても納税通知書が届くことがあるのです。
固定資産税は、1月1日の時点で固定資産税課税台帳に記載されている所有者に対して課税されます。人が死亡すると固定資産税課税台帳における所有者が相続人に書き換えられることがあり、相続放棄したとしても自動的に送られてきてしまうのです。
この場合、残念ながら納税通知書の宛先になっている相続人が固定資産税を納税しなければなりません。
相続登記をしなくても無駄
固定資産税の課税を逃れるために、土地の登記名義を相続人名義に変更する「相続登記」を意図的に行わないようにしている相続人の方が時々いますが、実はあまり意味がありません。
先ほど申し上げた通り、固定資産税は登記簿上の所有者ではなく「課税台帳上の所有者」に請求が行くので必ずしも連動しているわけではないのです。
たとえ相続登記をしなかったとしても、役所側で相続人がわかれば請求は来ることになります。
求償することは可能
このように一旦請求が来てしまったら、原則として納税するしかないのですが、その後実際の所有者がわかれば、立て替えた分を請求する「求償」ができます。
つまり、税務上は納税通知書が届いた本人に納税義務がありますが、民事上は実際の所有者に対して請求する権利があるということです。
相続放棄をした土地でも法務局に行けば謄本を取得できますので、そこから現在の所有者を割り出して求償することになります
税務署への還付請求はできるのか
一旦納税した後に相続放棄していたとして、税務署側に還付請求をすることは可能なのでしょうか。本来、払いすぎた税金が判明した場合は5年以内であれば更正の請求をすることによって、税金の還付が受けられます。
ところが、固定資産税についてはあくまで課税台帳上の所有者に課税するというスタンスをとっている税金なので、たとえその時点で相続放棄が成立していて所有者ではなくなってしたとしても、還付請求が認められないようです。
まとめ
固定資産税は毎年課税されるため、使う予定のない土地を保有し続けることは非常に大きな負担となります。できれば相続後に売却する方がよいのですが、総合的にマイナスの財産の方が多ければ相続放棄も選択肢の1つです。
ただし、相続放棄をしたとしても課税台帳上の所有者名義が変更されるまでの間は、納税通知書が届く可能性がありますので注意しましょう。
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