相続人・遺留分 2018.04.02
相続人が配偶者のみの場合の遺産相続について
遺産相続の際に子供がいないと、相続人になるのが被相続人の配偶者のみになるというケースも考えられます。
日本においては、どんな人であっても複数の配偶者を持つことはありません。配偶者のみの遺産相続は必ず一人で行われますから、他の相続人との交渉の必要もなく、非常にスムーズに進みやすい遺産相続です。
ここでは、遺産相続で配偶者のみが相続人になる場合の相続分や遺留分、配偶者のみが相続人になる場合の代襲相続の可否や、配偶者のみが相続人になる場合の相続放棄についても解説します。
相続人が配偶者のみの場合の相続分
遺産相続対象の遺産が全部判明したら、相続人の間で遺産を分割しなければなりません。原則として、遺言書が遺されている場合には、その内容に従って遺産分割が行われます。
遺言書がなければ、相続人全員で遺産分割協議を行い、話し合いながら具体的な分割方法を決定することになります。
遺産分割協議では、法定相続分の割合を参考にしつつ各相続人の相続分を決めます。法定相続分では、被相続人の配偶者にはどんなケースでも最大割合の相続分が与えられています。
しかし、配偶者のみが相続人になる場合には自分ひとりでの遺産相続となるため、遺言書に特別な指示が書いていない限りは、すべての遺産を配偶者のみが相続することになるでしょう。
相続人が配偶者のみで遺産を分けるべき相手がいないということは、遺産の分割をめぐる揉め事が起こらないということでもあります。配偶者のみが相続人となる遺産相続は、このような面では安心と言えるでしょう。
相続人が配偶者のみの場合の遺留分
被相続人に先立たれた配偶者が女性であれば、被相続人の死亡によって生活が不安定になることも考えられます。配偶者のみが相続人である場合の遺留分は、最低でも遺産全体の半分であるため、被相続人亡き後の生活も何とか目処が付くでしょう。
しかし、被相続人の生前贈与や遺贈によって、遺留分にも満たない遺産しか受け取れない可能性もあります。
その場合は、遺留分の侵害につながる贈与や遺贈を受けている相手に対し、遺留分の返還を請求する「遺留分減殺請求」をすることになります。
遺留分減殺請求は、遺留分侵害の原因が複数ある場合、新しい原因から請求していくことになります。遺贈と贈与の両方が行われたのであれば、まずは遺贈分から請求します。
遺留分減殺請求の権利は、遺留分侵害を知った時から1年以内に行使しなければ時効になってしまいます。相手との交渉がなかなか進まない場合は、弁護士に相談して対処を依頼するのが最善です。
相続人が配偶者のみの場合の代襲相続
相続人が被相続人の死亡より先に亡くなっている場合は、子どもが親の代わりに相続人となる「代襲相続」をすることが可能です。
代襲相続が認められているのは、被相続人の直系卑属である子どもの子ども(孫)、または被相続人の兄弟姉妹の子ども(甥や姪)のみです。
配偶者のみの遺産相続では、代襲相続は発生しません。
配偶者のみの遺産相続で代襲相続人になり得るのは配偶者の子どもですが、子どもがいるならば相続人は配偶者のみではなく、配偶者と子どもが遺産相続で相続人になっているはずだからです。
配偶者のみの遺産相続での代襲相続に関して注意したい点は、配偶者の連れ子の代襲相続の可否です。
配偶者の連れ子は、被相続人と配偶者が結婚した時に、すでに誕生していた子どもであるはずです。そのため、被相続人から見て直系卑属には当たりません。配偶者のみの遺産相続では、代襲相続は起こり得ないということを覚えておきましょう。
相続人が配偶者のみの場合に相続放棄する場合
相続人が配偶者のみだとしても、様々な事情から相続放棄を検討することもあるでしょう。
配偶者のみが相続人になっているということは、被相続人の直系尊属も兄弟姉妹もすでにいないということですから、配偶者が相続放棄するなら相続人がいなくなることになります。
配偶者のみの遺産相続においても、相続放棄によって債務や責任を逃れることはできますが、相続財産の管理責任からは逃れられません。それを逃れるためには、相続財産管理人の選任手続きをすることが必要です。
この手続きは、被相続人の住所地の家庭裁判所に申し立てることで行えます。
まとめ
相続人が配偶者のみであれば、遺産を分ける相手もいないため、円滑に遺産相続を進めることができます。
配偶者のみの遺産相続において相続放棄をする場合には、相続財産の管理責任を確実に手放すために、相続財産管理人の選任手続きを必ず行いましょう。
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