相続税 2017.10.02
相続税の基礎控除額とは?
平成27年に税制改正が行われ、税率が見直されたり、基礎控除額が縮小するなど、相続税はあきらかに増税への一途を辿っており、「相続税」という言葉を耳にする機会も年々増えているのではないでしょうか。
財産を多く所有している方にとっては勿論のこと、うちには財産なんてないから大丈夫!と思っている方にとっても、相続税はもはや他人事ではありません。
そこで今回は、来たる相続に備えて、相続税について知る上でとりわけ重要な「基礎控除額」についてを中心に学んでいきたいと思います。
基礎控除額とは何か
相続税は、遺産をもらったら必ず納めなければならないのかというと、そうではありません。課税対象となる財産の一部は、基礎控除額と呼ばれており、相続税がかからない仕組みになっているからです。
つまり、相続税とは、基礎控除額を超える財産を受け取った人のみが申告しなければならない税金のことなのです。もし、被相続人に債務があった場合は、遺産総額から債務を差し引いて計算し、その額が基礎控除額以下であれば相続税を支払う必要はありません。
また、遺産の総額が基礎控除額を上回っていても、配偶者の税額軽減や未成年者控除などで、相続税を支払わなくてもすむケースもあります。
平成27年の税制改正と基礎控除額の縮小
それでは、基礎控除額とはどのようにして決められるのでしょうか?
平成27年に行われた相続税の改正と合わせて見ていきましょう。
平成27年の税制改正により、基礎控除額は改正前と比べて大幅に減額されることになりました。
改正前の基礎控除額は、
5000万円+(1000万円×法定相続人の数)
であったのに対し、改正後は
3000万円+(600万円×法定相続人の数)
となり、なんと60%も減額されています。
例えば、法定相続人が4人いた場合、基礎控除額は、以前は
5000万円+(1000万円×4)=9000万円
であったのに対し、平成27年からは
3000万円+(600万円×4)=5400万円
となりました。
このように、基礎控除額の縮小は、数字で見れば歴然です。
相続税を支払う必要のある人の数も、そして額も、確実に増加するでしょう。
この計算例から、相続税を知る上で、基礎控除額について理解しておくことの重要さがおわかりいただけたかと思います。
また、法定相続分に応じた取得額による相続税の税率も改正され、最高50%の税率であったものが55%に引き上げられました。
相続財産が2億円超〜3億円以下だった場合、改正前は税率が40%だったのに対して改正後は税率45%、相続財産が6億円超だった場合、改正前は税率が50%だったのに対し、改正後は税率55%という具合です。
前述した基礎控除額の減額もあるため、財産の多い方は注意が必要です。
相続税の計算方法
相続税の計算は、基本的に4つのステップに分けて考えていきます。
一つずつ見ていきましょう。
ステップ1:相続人それぞれの課税価格を算出する
各相続人が受け取った財産の中から、課税される遺産(課税価格)だけを合計します。
↓
ステップ2:課税される遺産の総額を計算する
各相続人の課税価格の合計から基礎控除額を差し引いて、課税される遺産の総額(課税遺産総額)を算出します。
↓
ステップ3:相続税の総額を求める
課税遺産総額を元に、各相続人が法定相続分で相続したと仮定した場合の取得金額とその税額を計算し、合計して相続税の総額を求めます。
↓
ステップ4:各人が納める必要のある相続税額を計算する
相続税の総額から、各相続人の課税価格に応じた税額を計算して、人によっては加算や控除をし、各相続人が納めるべき税額を求めます。
基礎控除額と法定相続人の人数
法定相続人の人数についての考え方は、民法と相続税法上で異なっており、注意が必要となります。民法では、相続を放棄した人は相続人とはみなされませんが、相続税法上では、法定相続人に含めて計算をします。
また、民法上では、養子は全員法定相続人となりますが、相続税法では被相続人に実子がいる場合養子は1人まで、被相続人に実子がいない場合養子は2人までしか法定相続人としてカウントして計算することができません。
遺産に関する基礎控除額の計算をする場合は、相続税法の規定を適用します。
なぜなら、相続税法の規定を使用しないと、多くの養子を迎えて基礎控除額を増額する、ということも可能になってしまうからです。
基礎控除額が増えれば、相続税を払わなくてもすむ、もしくは相続税を大幅に軽減することが可能になり、公平さが保たれなくなります。
基礎控除額は、相続税の計算をする上で大きな影響のある金額です。
民法とは異なる相続税法における法定相続人の人数の取り扱いについて、は必ず覚えておきましょう。
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