相続税 2018.01.19
法定相続人の人数が相続税に影響するわけとは
相続税は、亡くなった人の遺産を受け継ぐ場合に課されることがある税金です。
相続税を節税するための取り組みは多数ありますが、少し前までは養子縁組によって法定相続人の人数を増やすことで、相続税を節税しようとする人もいました。法定相続人が何人いるかによって、相続税の税額に大きく影響するためです。
この記事では、法定相続人の人数が相続税にどのように影響するのか、近年改正されたポイントも踏まえて解説します。
相続税および法定相続人とは
まず、相続税と法定相続人についての正しい理解を確認しておきましょう。
「相続税」とは、亡くなった人の遺した財産を受け継ぐときにかかる税金(国税)です。相続以外にも、遺言による遺贈があった場合や死因贈与を受けた場合、また亡くなった人から生前に相続時精算課税制度によって財産を譲り受けている場合には、相続税が課されます。
相続税は、課税対象の遺産総額が基礎控除額を超える場合、また被相続人が負っていた債務を差し引いても遺産総額が基礎控除額を上回る場合に、課されることとなります。
相続税の計算方法は、大きく分けて次の4つのステップで算出されます。
1.各相続人の課税価格を計算する
各相続人が、自分が受け取った財産の中から課税される遺産の額、つまり「課税価格」を算出します。
2.課税遺産総額を計算する
各相続人の課税価格を合計して、そこから基礎控除額や各種控除分を差し引き、課税される遺産総額を算出します。
3.相続税の総額を計算する
課税遺産総額から、各相続人の法定相続分に応じた取得金額と税額を計算し、それらを合計して相続税の総額を算出します。
4.各相続人が納めるべき税額を計算する
相続税の総額から、実際の各相続人の課税価格に応じた税額を算出し、個々の事情に応じて相続税の加算や控除を行います。
ここまでの計算によって、各相続人の最終的な相続税の総額が分かります。
「法定相続人」とは、民法で定められている相続人のことを指しています。法定相続人には相続順位も定められており、第一順位は子、子が亡くなっている場合は孫やひ孫、第二順位は直系尊属の父母、第三順位は兄弟姉妹となっています。
上位順位の法定相続人が死亡するか相続放棄をした場合に、下位順位の法定相続人が相続権を得ます。
法定相続人の人数で、相続税の基礎控除額が決まる
相続税には、課税対象の財産総額が一定の基準以下であれば相続税が非課税となる「基礎控除額」の規定があります。
基礎控除額は、次の計算式で計算します。
3,000万円+600万円×法定相続人の数= 相続税の基礎控除額
法定相続人が1人なら3,600万円、3人なら4,800万円が控除されることになり、それを超える相続財産がないなら相続税を納める必要はないことになります。
法定相続人の数は、生命保険金の非課税枠の計算にも影響します。
法定相続人が多いほど控除額や非課税枠が増えるなら、相続が発生した後に備えて養子縁組をたくさん行っておき、法定相続人を大人数にすれば節税になると従来は考えられてきました。しかし近年の税制改正により、今ではこの方法は使えなくなっています。
養子縁組によって大人数の法定相続人を生むことはできない
法定相続人について言及している法は様々ありますが、民法と相続税法では法定相続人についての捉え方が異なります。
民法では養子も法定相続人として数えられますし、その人数にも制限はありません。一方、現在の相続税法では、被相続人に実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人の養子だけしか法定相続人として認められません。
ただし、民法上の特別養子や配偶者の実子で被相続人の養子になっている場合、あるいは実子の代襲相続人である場合は実子として扱われるので、この制限は当てはまりません。
法定相続人として数えられる養子の人数の制限は、相続税逃れのための養子縁組制度の乱用を防ぐ目的があるとされています。
法定相続人の人数は、相続税の基礎控除額の計算に大きく影響します。法定相続人の人数が多ければ多いほど基礎控除額は大きくなりますが、養子を法定相続人にする場合は、実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人までしか認められません。
元々子供がいない場合には有効ですが、養子縁組での相続税対策はもはや時代遅れの相続税対策と言えるかもしれません。
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