相続税 2018.02.24
兄弟で相続する場合の相続税の負担について
遺産相続によって相続財産を得た人には、相続税を負担する必要が生じます。しかし被相続人の配偶者など、高額の相続税額控除の対象となる相続人もいます。一方、一部の相続人には割り増しされた相続税が課されることもあります。被相続人の兄弟が相続する場合などが、相続税の割り増しされるケースとなります。
この記事では、相続税を負担するべき人と相続税の計算方法、また兄弟が相続する場合の相続税の負担割合や、兄弟の相続税が割り増しされる理由などについて解説します。
相続税を負担しなければならない人とは
相続税は、その基礎控除額を超える分の相続財産に対してかかる税金です。相続税を支払わなければならないのは、被相続人の兄弟も含め、次のような立場の人です。
1.相続または遺贈によって財産を得た相続人
被相続人の死亡によって相続人となり、相続財産を得た兄弟などの相続人は、当然ながら相続税を支払う義務があります。
2.遺贈により財産を得た、相続人ではない人
相続放棄した人が、被相続人の生命保険金や死亡退職金として財産を受け取った場合、取得した財産に非課税枠は適用されることなく、相続税の課税対象となります。また、友人や婿・嫁など相続人ではないものの遺言によって相続財産の一部を得た人の場合にも、相続税がかかります。
3.死因贈与によって財産を得た人
贈与する側の人が死亡したら、それを理由に財産を与えるという死因贈与によって財産を得た人も相続税を負担します。贈与という名前のため、かかる税金は贈与税ではないかと思いがちですが、死因贈与の場合は相続税がかかりますので間違えないようにしましょう。
4.相続時精算課税の適用となる贈与財産を得た人
親から子どもへ、好きなタイミングで2,500万円までの贈与をすることができる制度です。
相続時精算課税という名前の通り、相続が発生したらその贈与分はすべて相続財産に加算されます。この制度では、相続発生時点の価格が高騰していようと暴落していようと、贈与された当時の価格をもとに相続税を計算します。
兄弟が相続する場合の、相続税の計算の流れ
では、相続税の計算の流れを、大まかに見てみましょう。大きく分けて、3つのステップで進めることができます。
1.各人の課税価額を求める
まずは、兄弟などの財産を取得した人ごとに課税価額を求めて合計します。兄弟を含め、各相続人に課税価額を計算しなければならない理由は、相続税の計算の最後で行う相続税額の振り分けの際に、それが相続税額の割合の基準となるためです。
2.基礎控除額を引き、課税遺産総額を求める
次に、課税価額の合計から相続税の基礎控除額を引き、課税遺産総額を求めます。そしてこれを、兄弟その他の法定相続人が法定相続分に従って相続したものと仮定して、相続税の総額を算出します。
3.相続税の総額を、各人の取得割合に応じて分ける
兄弟など、実際に財産を取得した人それぞれの取得割合に応じて、相続税の総額を振り分けます。仕上げに、兄弟や各相続人の事情によって適用できる種々の税額控除や加算を適用すると、実際に納付するべき相続税額が算出されます。
被相続人の兄弟が相続する場合の相続税について
相続税は、各相続人の相続する財産の額に応じて変動します。ただし、被相続人の兄弟が相続する場合には注意が必要です。
相続税には「相続税額の2割加算」という制度があります。相続・遺贈や相続時精算課税に係る贈与によって財産を取得した人が、被相続人の一親等の血族また配偶者以外の人である場合には、その人の相続税額にその相続税額の2割に相当する金額が上乗せされることになるからです。
兄弟が相続する場合、兄弟は二親等にあたるため、相続税額の2割加算の対象者となってしまいます。兄弟の他には、孫(代襲相続でない)、三親等である甥や姪、また相続人となり得ない内縁の配偶者や友人知人なども対象です。
仮に、兄弟が負担する相続税の額が100万円だとすると、2割加算された120万円が、兄弟が実際に支払う相続税額となります。相続するのが兄弟であるというだけで、相続税がかなり大きく違ってくることが分かります。
兄弟その他の人に対する相続税額の2割加算という制度は、配偶者や子ども、直系尊属以外の人が相続することは偶然性が高いこと、また相続税の負担軽減を意図して、孫を相続人とすることで相続税を1回分回避できてしまうことなどから、相続税の公平性を維持するという趣旨をもとに設けられた制度です。
兄弟の立場としては悔しいかもしれませんが、兄弟同士ではお互いの財産形成に深くかかわることも考えにくいため、やむを得ないことと考えましょう。
まとめ
兄弟が相続する場合は、通常の2割増の相続税を支払う必要があります。相続税の計算は正確に行わなければなりませんから、兄弟の2割加算などを計算し忘れないよう注意しましょう。
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