相続税 2020.03.04
相続人の配偶者は口だすな。争族の原因はこれだ!
遺産相続の争いは相続財産が多い家庭に限ったトラブルだと思うかもしれませんが、実はそうとも限りません。
実際相続財産が少なくても、さまざまなことが引き金となって遺産分割が泥沼化するケースはよくあります。
そこで今回は遺産分割がもめる起爆剤となってしまいやすい、「相続人の配偶者の口出し」について解説したいと思います。これから遺産分割の話し合いをするという方は、ぜひこの記事を読んで参考にしてもらえれば幸いです。
遺産分割が難航するよくある傾向
相続が発生すると相続人全員で遺産分割の話し合いをして、誰がどの財産を相続するかについて取り決めをします。
一般的なご家庭であれば、この段階でもめているケースは少ないように感じます。
例えば、夫が死亡し妻と娘AとBの2人が相続人の場合、すでに娘が嫁いでいることも多いので、遺産分割の話し合いがなかなか進まず解決に時間がかかってしまうケースがよくあるのです。
相続税申告期限が迫ってくる
相続税が課税されないご家庭であればよいのですが、相続税の課税対象となるご家庭については相続開始から10ヶ月以内に申告と納税をする必要があるので、遺産分割も終わっている必要があります。
この段階になると全員が徐々に焦りだすので、ある現象が起きます。
それが相続人の旦那さんの遺産分割協議への介入です。
上記のケースでいえば、相続人である娘Aの配偶者の夫が遺産分割に口を出し始めます。
最初は公平中立な立場
旦那さんが介入するといってもいきなりもめるのではなく、最初は公平中立な立場で間に入って遺産分割を解決するよう協力する姿勢であることが多いです。
ただ、相続人の配偶者は遺産分割において完全に中立的な立場になることは不可能で、どうしても自分の妻に少しでも多く相続させてあげたいという心理が働きがちです。
仮にそうではなかったとしても、他の相続人の目から見るとそう見えてしまうこともあるため、結果として相続人同士が疑心暗鬼になってしまい、このあたりから徐々に険悪なムードになっていきます。
娘Aの配偶者の心理としては、良かれと思ってボランティア精神でやっているケースが多いので、それでも信頼をしてくれない他の相続人に対していら立ちがどんどん募っていくのです。
さらに配偶者が参戦
このような状況になると娘Bも自分の配偶者に相談を始めるため、それによって娘Bの配偶者も遺産分割協議に口を出し始めることになります。
こうなってしまうと、弁護士を立てずに遺産分割を解決することはほぼ不可能になります。
家庭特有の事情を知らない相続人の配偶者が遺産分割に介入してくることで、本来であれば3人で合意すればよかった話が5人で合意しなければ解決しない問題になってしまうのです。
遺産分割調停になるリスク
どうしても話し合いで解決できなければ、裁判所で遺産分割調停をするしかありません。ただ、遺産分割調停は平日の昼間に行うので、仕事をしている人や家事で忙しい主婦の方にとっては非常に大きな負担となります。
弁護士を立てなければ費用はそこまでかかりませんが、基本的に調停までいってしまうと家族関係は修復不能な状態にまで悪化してしまうため、以前のような親戚付き合いはできなくなるでしょう。
相続税が高額になる
相続税申告期限までに遺産分割が終わらないと、一旦法定相続分に従って相続したと仮定して相続税申告をして納税をしなければなりません。
この際、小規模宅地等の特例や配偶者控除といった相続税を大幅に減額させられる特例制度が一切使えなくなるので、かなり高額な相続税を納税することになります。
あとで遺産分割が終わった後に、更正の請求によって改めて相続税申告をすることで差額分の相続税は還付してもらえますが、高額な相続税を一旦立て替えなければならなくなるのでその負担はかなりのダメージです。
円満相続のコツとは?
遺産分割を円満に解決するためには、できる限り部外者は口出ししないということです。
たとえ相続人の配偶者であっても話し合いに参加し始めると、どんどん参加する人数が増えてしまい軋轢を生む可能性が高まってしまいます。
例え配偶者が弁護士や司法書士といった専門家だったとしても、中立的な立場で動くことは不可能なので直接の介入は絶対に避けましょう。
心配なら相談に乗る
相続人の配偶者が遺産分割協議に参戦するのは厳禁ですが、相談には積極的に乗ってあげましょう。
直接話し合いに参加して間を取り持とうとするとうまくいきませんが、自分の配偶者にアドバイスするだけであれば状況を好転させられる可能性もあります。
完全に関わってはいけないということではなく、直接的に関わらないということが大切なのです。
まとめ
遺産分割でもめてしまうと、何よりその後の親戚付き合いに深い溝を残してしまいます。
できるだけ穏便に解決するためには、相続人だけで話し合った方がよいということを覚えておきましょう。
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