相続税 2020.07.03
管理会社が潰れて家賃がパー。相続登記したらすべきこととは
遺産相続が紛争化するケースにはいくつかのパターンがありますが、中でも話がこじれやすいのが「アパートの相続」です。
そこで本記事では、アパート相続がもめる理由と実際にあり得るリスクと対処法について詳しく解説します。
アパート相続が紛争化する理由とは
相続財産の中でも不動産は最も多くの価格割合を占めるといわれていますが、中でもアパートなどの賃貸物件が含まれている場合は、遺産分割でもめることがとても多い傾向があります。
アパートは不動産としての価値以外にも「家賃収入」という大きなメリットが付いてくるので、相続したいと考える相続人が多いのです。
ここでは、アパート相続で避けた方がいい解決法と理想的な解決法についてご紹介します。
共有は避けるべき
遺産分割協議がまとまらない場合によくやる解決法が「共有」です。
共有とは、1つの資産を複数の相続人で所有することで、不動産の場合は法定相続分に応じた持分を登記することで、相続人全員の共有とします。
正直なところ、遺産分割の着地点としては非常に楽で、法定相続分に応じて割合を登記できるので、もめたときの解決策として使うこともあるのですが、実務上ははっきりいっておすすめできません。
というのも、1つの不動産を複数で共有すると、次のようなデメリットがあります。
・行為によっては全員の承諾をその都度とらなければならない
・二次相続が発生すると、さらに共有者が増えてします
基本的に共有という解決法は、その場しのぎにしかならず問題の根本の解決を将来に先送りしているようなものなので、できる限り避けることをおすすめします。
代償金で解決する
不動産相続を最もスマートに解決できる方法、それが「代償分割」です。
アパートを単独で相続するとなると、どうしても他の相続人との間で不公平感が出てしまうので、その利益調整のためにアパートを相続する相続人からほかの相続人に対して代償金を支払うことで納得してもらいます。
非常に有効な手段ですが、代償金を支払えるだけの金銭を準備しておかなければならない点がネックです。対策としては生命保険の保険金を活用するケースがよくあります。
アパート相続時の注意点
アパートを相続する際に注意しなければならないのが、家賃の管理です。
相続が発生した旨を銀行に連絡すると、被相続人名義の口座が凍結されてしまうので、賃借人からの家賃の振り込みが受けられなくなってしまいます。
実際に聞いた事例では、間に管理会社が入っていたことから賃借人からの家賃徴収に問題はなかったものの、管理会社から家賃送金が受けられないという状況に陥ってしまったのです。
管理会社からは遺産分割が終わって相続登記が完了するまで預かるとのことで、事前に送金が必要であれば法定相続人全員の同意書が必要といわれたため、結局そのまま預かってもらっていたそうです。
遺産分割が長期化
ところが遺産分割がもめてしまい、解決するまでに1年以上もかかってしまい、相続人も疲れ切ってしまいました。結局アパートを相続人のうちの1人が単独相続することになったのですが、相続登記をした後安心してしまいその後また半年ほど放置してしまったのです。
家賃が入金されないことに気が付いて慌てて管理会社に連絡したところ、すでに管理会社の経営が悪化して事実上廃業のような状態になっていたそうです。
未送金の家賃が1年以上ストックされていたため、かなりの金額になったそうですが、何とか送金を受けることができたとのことでした。
相続登記が終わってもそのことを管理会社に連絡しないとわからないので、終わった際にはすぐに連絡することを忘れてはいけません。
代表者の口座へ送金してもらう
このように遺産分割が長期化する場合は、管理会社に家賃を預かってもらうのではなく、相続人のうちだれか1人の口座に送金する手続きをとったほうが安全です。
勝手に手続きをすると後でトラブルになるので、法定相続人全員の同意を書面で得たうえで、それを管理会社に見せれば対応してくれるでしょう。
遺産分割完了までの家賃は
遺産分割が長引いた場合に争いになりやすいのが、その間の家賃収入です。
過去の判例では、遺産分割完了までの家賃については、法定相続分に従って各相続人が取得するとのことですが、実際それでは納得しない相続人が出てきます。
そのため遺産分割協議をする際には、アパートの帰属だけでなく、遺産分割協議中の家賃の帰属についても誰になるのかはっきりさせておいたほうがよいでしょう。
まとめ
アパートの相続は遺産分割が長引くケースが多く、その間の家賃の取り分や管理についてさまざまなリスクがありますので注意が必要です。
できれば生前から話し合っておいて、相続発生後にはスムーズに手続きできるよう心がけましょう。
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