相続税 2020.08.12
相続税の二割加算ってなに?
相続税の基礎控除額が引き下げになって以降、相続税の納税に苦労している方が増えているように感じます。
相続税というと基礎控除や税率を気にされる方が多いですが、実は一定の方が遺産を取得すると相続税が二割加算になるルールがあり、これを知らない方が驚くケースがあるのです。
そこで本記事では、相続税の二割加算になる人や発生条件などについて詳しく解説します。
相続税が二割加算になる人
被相続人から見て次の人が遺産を取得した場合、相続税が通常よりも二割加算となります。
・兄弟姉妹
・甥姪
・祖父母
・代襲相続人ではない孫
・被相続人の養子となった孫
・内縁関係の相手方
・友人、知人など法定相続人以外の人
このように、血縁関係が被相続人から見て遠い人たちやそもそも血縁関係がないような人が遺産を取得した場合は、いわゆる棚から牡丹餅状態なので相続税は通常よりも二割加算になるというわけです。
養子の取り扱いについて
養子は原則として実子と同じように扱われるので、養子縁組をしていれば血がつながっていなくても法律上の親子関係が生じるので相続税の二割加算にはなりません。
ただし、相続対策で孫を養子縁組して相続人にするケースについては、例外的に養子であっても相続税が二割加算されますので注意が必要です。
内縁関係の相手方
内縁の妻や夫といった婚姻していない関係性の方については、相続が発生しても相続人にはなれません。これは居住していた年数にかかわらず、一切認められないので注意が必要です。
時々、3年以上同居していれば権利があると誤解している人がいますが、そのようなルールはないので内縁の妻や夫に遺産を取得させたいのであれば、亡くなる前に婚姻するか、遺言書を書いておく必要があります。
ただ、実務上は遺言書だけだと被相続人の兄弟姉妹との間でかなりもめるので、できるだけ婚姻することがおすすめです。
仮に、有効な遺言書を残して死亡して内縁の妻や夫が遺産を相続した場合は、相続税の二割加算の対象となります。
友人知人などについて
相続というと親族にしか財産を取得させられないと思っている人も多いようですが、遺言書にはっきりと記載しておけば、親族ではない友人や知人などにも遺産を遺贈という形で取得させることが可能です。
このケースでは、本来もらえるはずのものではないものがもらえるラッキーな状況なので、相続税は二割加算となります。
生命保険に注意
遺言書に二割加算に該当する人の名前がなかったとしても、まだ相続税二割加算の可能性があります。被相続人を保険料負担者、被保険者、とする生命保険に加入していた場合、保険金がみなし相続財産に該当することになるので、保険金の受取人に相続税が課税されるのです。
そのため、例えば保険金の受取人が愛人になっているような場合については、相続税の二割加算の対象になるため注意しましょう。
相続税の二割加算の計算方法
ここでは子供と孫養子の2名が相続人であると仮定して、1億円の相続財産に対して実際にかかる相続税について計算してみたいと思います。
まず、相続税の基礎控除額は次の通りです。
3,000万円+600万円×2(法定相続人の人数)=4,200万円
よって課税対象となる遺産の総額は、1億円-4,200万円=5,800万円となります。
法定相続分は1/2ずつになるので、2,900万円に対して税率15%、控除額50万円を差し引いて385万円となり、2人で770万円の相続税が発生することになります。
二割加算されるのは、770万円のうち孫養子が相続する部分に該当する相続税だけなので、仮に孫養子が1/2を相続するとした場合、孫養子が負担する相続税は二割加算されて462万円になるということです。
相続税対策と二割加算
相続税対策を考える際には、二割加算の条件についても頭に入れて考える必要があります。
遺言書を書けば遺留分を侵害しない範囲で自由に遺産を取得させることができますが、二割加算の条件にあてはまる人に取得させると相続税が割高になるので、節税対策も含めて遺言書を書く場合は、発生する相続税についてシミュレーションすることが大切です。
できれば相続税に強い税理士に相談してから遺言書を書いた方が、より節税効果の高い遺言書を作成できるでしょう。
まとめ:二割加算を知らない人が多い
このように同じ遺産を相続した場合でも、二割加算の対象者については相続税が割高になります。このことを知らずに自分で相続税申告をする人がいて、二割加算されていない相続税を納税してしまうケースがあるため注意が必要です。
二割加算を知らずに申告してしまうと、あとで追徴課税されて延滞税なども加算されてしまうので十分気をつけましょう。
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