相続税 2020.09.09

遺産分割協議書VS遺言書 どっちが勝つ?

遺産分割協議をして遺産分割協議が終わって、やっと一息ついた時、何と遺言書を発見。
そんなケースが時々ありますが、この場合、遺産分割協議書と遺言書どっちが勝つのでしょうか。
今回は、実際によくあるケースをもとにどっちが勝つのかについて詳しく解説します。

記事ライター:棚田行政書士

遺産分割協議の後に遺言書が見つかったケース

遺産分割協議はご家庭によって終わるまでにかかる期間が大幅に違ってきます。

中でも相続人が配偶者と兄弟姉妹の場合は、兄弟姉妹がすでに別世帯であることが多く、兄弟姉妹の配偶者が口出ししてくることもあるため、もめやすく解決までに時間がかかる傾向があります。

今回ご紹介する事例も、遺産分割協議が長く続いてやっと解決した事例です。

配偶者と被相続人の姉、妹が相続人だったケースで1年以上の期間がかかってやっと遺産分割協議が終わりました。

遺産分割協議書も作成して全員の印鑑証明書も揃って、やっとこれで全部終わったと思ってホッとした矢先、被相続人が使っていた部屋から封筒に入った遺言書が発見されたのです。

遺言書の内容が遺産分割協議と異なる

遺産分割協議では、争った末に全員均等に分けることで合意していました。

ところが、見つかった遺言書の内容を見てみると、遺産のうち大部分を配偶者に相続させる旨の遺言が記載されていたのです。

しかし、手元にはすでに実印の捺印がある遺産分割協議書が存在しています。

この場合、発見した遺言書と遺産分割協議書どっちが優先されるのでしょうか。

遺言書が優先されるが

このように遺産分割協議が終わった後に遺言書が見つかった場合、どっちの内容が優先されるかというと結論としては遺言書です。

今回の事例のように、遺産分割協議に長い時間がかかっていると遺言書よりも優先されそうな気がするかもしれませんが、協議にかかった時間は関係ありません。

そもそも相続が発生したら、遺言書の有無によってその後の手続きの流れがまったく異なるので、遺産分割協議を始める前に入念に遺言書の有無を確認する必要があります。

遺言書が見つかった以上は、遺産分割協議が成立していたとしても遺言書の通りに遺産を分けることが可能になるのです。

 

例外的に遺産分割協議が勝つケース

法的には遺産分割協議と遺言書では遺言書の勝ちですが、現実的には遺産分割協議が勝つこともありえます。つまり、遺言書が負けるケースがあるからです。

それは、相続人全員が合意した場合です。

今回のケースのように遺産分割協議に長期間かかったような場合は、後で遺言書が見つかったとしても相続人全員が遺産分割協議の内容を優先したいと考えることが多々あります。

このように相続人全員が遺産分割協議の方を支持すれば、遺言書が見つかったとしても遺産分割協議の内容に沿って手続きを進めることも可能です。

事例では、遺言書によれば配偶者の取り分が多くなるので、配偶者が遺言書を支持すれば遺産分割協議の内容をなかったことにして遺言書を執行できます。

ところが、現実的にはそんなことをすれば被相続人の姉や妹とさらに険悪な状況に陥ることは目に見えているため、たとえ自分にとって有利な遺言書を発見したとしても辞退するケースもあるのです。

遺言書の捜索は入念に

遺言書は後から見つかると手続き全てをリセットしなければならないため、相続が開始したらまず遺言書を徹底的に探すことをおすすめします。自宅や貸金庫を探すのはもちろんの事、法務局や公証役場に保管されている可能性もありますので、問い合わせて検索してみましょう。

※2020年法改正により、自筆証書遺言を法務局で保管するサービスがスタートしました。

 

見つかった遺言書が酷い内容だったら

相続が開始してすぐに遺言書が見つかったとして、それが必ずしも相続人にとって納得のいく内容のものとは限りません。

基本的に遺言書が見つかった以上、その内容通りに執行する必要がありますが、相続人全員が遺言書の内容に反対であれば、その時点で遺言書を執行せずに遺産分割協議に切り替えることも可能です。

ただ、あくまで相続人全員の合意が必要なので、1人でも反対することがあれば遺言書の通りに執行しなければなりません。

 

まとめ

相続の手続きは遺言書と遺産分割協議どちらで進めるかによって、流れが大きく変わります。

まずは遺言書の有無を正確に確認することが重要ですが、見つかったとしても相続人全員が反対であれば必ずしも拘束されるわけではないということも一緒に覚えておきましょう。

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