土地・不動産 2019.02.18
不動産を相続して売却した場合の所得税の計算方法
親から不動産を相続した場合、すでに自宅として住んでいるようであれば、そのまましばらく持ち続ける可能性が高いかと思いますが、空き家の場合についてはそのまま売却しようと考える人も多いのではないでしょうか。
相続不動産を売却した場合は、通常の売却と同じように譲渡所得に対して所得税が課税されますが、計算方法が若干ややこしいので注意が必要です。そこで今回は、相続不動産を売却する際の所得税の計算方法について解説します。
所得税を計算する際の譲渡所得について
相続不動産の所得税を計算する際には、課税対象となる「譲渡所得」を算出する必要があります。譲渡所得とは、簡単に言うと相続不動産を売却した際の「利益」のことで、計算式にすると次の通りです。
譲渡価額—取得費—譲渡費用—特別控除=譲渡所得
譲渡価額について
譲渡価額とは、相続不動産を売却した時の金額のことです。当然ですが、高く売れれば売れた分だけ所得税は高くなります。譲渡価格については、売買契約書で確認しましょう。
取得費について
取得費とは、不動産の購入時の価格のことを言います。相続不動産の場合については、亡くなられた被相続人が買った時の金額がベースとなる点がポイントです。
ただし、建物部分については、買った金額から減価償却費を控除するため、所有期間が長いほど、取得費は減ることになります。ちなみに、自宅不動産の減価償却率は以下の通りです。
木造:耐用年数33年 償却率0.031%
軽量鉄骨:耐用年数40年 償却率0.025%
鉄筋コンクリート:提要年数70年 償却率0.015%
その他にも、不動産会社に支払った仲介手数料や売買契約書に貼った印紙代、不動産取得税、登録免許税、登録手数料、建物の取り壊し費用などについても、取得にあたって支出していれば取得費として計算することが可能です。
譲渡費用について
譲渡費用とは、相続不動産を売却するためにかかった費用のことで、売却の際の仲介手数料や不動産会社に支払った広告費、測量費、印紙代などについても該当します。
特別控除について
居住用の不動産を売却した場合については、国の政策的な配慮によって3,000万円の特別控除が設けられており、大幅に所得税が節税となります。
空き家の売却による所得税が節税できる
最近では相続によって誰も住まなくなった空き家が増えており、社会問題にまで発展しています。空き家が放置されると周辺の生活環境に悪影響が及ぶため、有効活用して利用を促進することが重要で、そのための政策の一環として所得税の控除ができるのです。
相続によって取得した空き家についても、一定の要件を満たせば3,000万円の特別控除が受けられます。
所得税が節税できる空き家とは
所得税の節税対象となる空き家は、昭和56年5月31日以前に建築された住宅で、売却する際に耐震リフォームなどを行って新耐震基準を満たすことで適用が可能となります。
耐震リフォームをしない場合でも、建物を取り壊して更地にして売却した場合でも、同じく3,000万円の特別控除を使うことが可能です。
適用期間について
所得税が節税できる3,000万円控除の適用期間は、平成28年4月1日から平成31年12月31日までの間です。
また、相続の時から相続の開始があった日以降3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に売却したものに限られます。
譲渡所得税の税率について
相続不動産の譲渡所得にかかる所得税(譲渡所得税という)の税率は、相続不動産の所有期間に応じて、次のいずれかが適用されます。
長期譲渡所得(所有期間が5年を超える場合):所得税15% 住民税5%
短期譲渡所得(所有期間が5年以下の場合):所得税30% 住民税9%
※所有期間は不動産を売った年の1月1日時点を基準に考えます。
このように、不動産の譲渡所得税については、所有期間の長さ次第で、税率が倍も違ってくるのです。
相続不動産の場合のポイント
所有期間とは、文字通り不動産を所有していた期間のことですが、相続不動産の場合はいつが基準となるのでしょうか。時々、相続不動産の所有期間は、自分が相続して取得した日から起算すると考えている人がいますが、それは大きな間違いです。
相続不動産の所有期間については、亡くなられた被相続人が不動産を取得した日から起算することになります。取得費の購入金額についても、被相続人の購入金額となりますので覚えておきましょう。
相続不動産の場合の取得費について
このように、相続不動産の所有期間については、被相続人の所有期間をそのまま引き継ぐことになります。
取得費についても被相続人の購入価額が引き継がれるのですが、相続した際にかかった不動産の登記費用や不動産取得税などについても、取得費に加算できますので覚えておきましょう。
まとめ
相続不動産を売却する際には、所得税が課税されますが、所得税計算のポイントとなる税率については、相続不動産の所有期間によって大きく異なるため、注意が必要です。
所有期間や取得費については、被相続人のものをそのまま引き継ぎます。計算する際には間違えないよう気を付けましょう。
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